農薬を使わない有機栽培のオリーブ畑には、実に多くの虫たちが集まってきます。その中にはオリーブアナアキゾウムシやハマキムシのようにオリーブの木や葉を食べる困った虫も含まれますが、それらはほんの少しです。多くの虫たちがオリーブの木が生える豊かな自然環境の中で、生き生きと輝いています。小豆島の穏やかで豊かな自然の中に生きるオリーブ畑の虫たちをご紹介します。

オリーブに集まる虫たち
害虫図鑑 
オリーブを食べる虫たち

害虫

オリーブアナアキゾウムシ

日本でのオリーブの農薬を使わない有機栽培が難しいのは、この虫の存在が最も大きな理由。3月末から11月まで活動し交尾をしてはオリーブの根元に卵を産みつける。孵化した幼虫は幹の周りをぐるりと食害し最悪の場合、木が枯れてしまう。成虫は暗くて湿気が多いところを好み、昼間は木の枝にぶら下がりじっとしていることが多い。夜行性で稀に飛んで移動する。ゾウムシが嫌う明るくて乾燥している状態を維持し、見つけ次第捕殺する。
 

害虫

ハマキムシ


ハマキガの幼虫がハマキムシ。ハマキムシの中でも数種類がオリーブの葉を食べる。特に柔らかい新芽が好物で春と秋に大量発生することがある。秋には実を食害する。葉っぱが不自然に綴られているので、それを見つけて丁寧に捕殺する。最も大量に発生する品種はマエアカスカシノメイガ。それ以外にマダラメイガやチャハマキ等がいる。手で捕殺する。写真はマエアカスカシノメイガの幼虫。
 

害虫

スズメガ


スズメガの幼虫は、食欲旺盛で体が大きいので新芽から古い葉まで丸裸にしてしまう。大量発生することはない。木の下に小さな黒い手榴弾のような糞を見つけたら、糞のサイズで個体の大きさを、糞の広がり具合で樹上の位置と高さを推測し捕殺することができる。木が小さいうちはダメージが大きいので丁寧に捕殺する。成木になって高い位置にいる場合は捕殺にしくいが、大きな影響はないのでそのままにしておいても問題なし。
 

害虫

カメムシ


クサギカメムシやチャバネアオカメムシ等、色々な種類のカメムシがオリーブ畑にやってくる。ただ休んでいるものもいれば、オリーブの緑果に口吻を突き刺し中身を吸いだすものもいる。年により大量に発生することもあるが、動きが早く飛んでどんどん移動してしまうため有機栽培では効果的な防除方法を見つけることができていない。唯一、集団でいる幼虫を見つけたらゴム手袋ですり潰す。
 

害虫

コガネムシ


成虫は花粉や樹液を舐めるだけなので無害。幼虫が木の根を食害する。地植えで木が弱るほどのダメージを与えられることは珍しいが、ポット植えで木が弱ってきたらコガネムシの幼虫を疑う。落ち葉や腐葉土、たい肥に含まれるオガクズなどが好物で畑に入れすぎるとコガネムシの幼虫が大量発生することがある。
 
 

害虫

コウモリガ


成虫の蛾が畑に飛来して産卵するため孵化した幼虫がランダムに発生する。食害する場所は中くらいの枝部分で、枝の太さによっては食害された箇所から上が弱るか枯れる。しかし、枝の一部が弱るくらいなので果樹収穫用の樹木としての被害は軽い。また当園での発生確認は2年に1回程度と非常に少ないのでほぼ無害な害虫。

 

益虫図鑑 
オリーブを食べる虫たちを食べる虫たち

益虫

クモ類

写真は害虫マエアカスカシノメイガを捕まえたアズチグモ。オリーブ畑で最もハマキムシの幼虫や成虫、スズメガなどを食べてくれるのがクモ類。ハナグモやワカバグモ等のカニグモ科の仲間にとってオリーブに寄ってくるハマキガ、その幼虫のハマキムシは絶好の餌食。虫が活動するほぼ全ての時期を通してオリーブ畑で活躍する最高の益虫。
 

益虫

アリ類


地上だけでなく樹の上までパトロールする働き者。自分たちが食べれそうな生き物は何でも食べてしまう食いしん坊。柔らかくてジューシーなハマキムシは格別の御馳走のようで、発見し次第捕まえて巣に運んでいく。しかし、日中は葉を綴って中にいるハマキムシは気づかないらしく、滅多に食べることはできていないみたい。
 

益虫

アシナガバチ


ハマキムシの幼虫が大好物。オリーブ畑に巣を作ってくれると、毎日オリーブの葉に付く青虫類を隅々までホバリングしながら探し、見つけると肉団子にして蜂の子に与える。巣が大きくなって蜂の個体数が増えるほど、ハマキムシの数が減っていく。しかし、夏の終わりころには、ほとんどの巣はスズメバチの攻撃を受けて全滅することが多い。不用意に人間が近づくと刺されるので刺激しないように距離をとって共存したい。
 

益虫

カマキリ


樹上で、じっと獲物を待ち続けてハマキガを食べてくれる。 春先に孵化した赤ちゃんカマキリがオリーブの葉陰に沢山隠れている様子は楽しい。夏前には成虫になりハマキガ等の蛾類を捕食する。青虫であるハマキムシには何故か反応しない。
 

益虫

テントウムシ


ハマキムシの卵が好物。 テントウムシは成虫も幼虫も虫の卵が大好き。春と秋に多く見られる。オリーブの葉の裏についたハマキムシの卵を1つずつ丁寧に食べてくれるので、数百匹の卵をあっと言う間になくなってしまう。カラスノエンドウなどのマメ科の雑草が下草に生えていると、アブラムシが増えて、そのアブラムシを食べにテントウムシがどんどんやってくる。
 

益虫

ドロバチ


ハマキムシ等の青虫類を捕獲して巣に運ぶ。ドロバチの仲間は 羽音を立てず青虫類に襲い掛かると幼虫を育てる巣穴に生きたまま運んで行く。オリーブの枝に徳利のような土の塊の巣を見かけることがあり、その中には数十匹のハマキムシが生きたまま眠らされている。
 
 

守り神

アマガエル


 
害虫も益虫も何でも食べる大食漢。 アマガエルは晩春から初秋までオリーブの樹上や支柱にしている竹筒の中などに住み着いて動くものなら、ほとんど何でもパクリ。畑の食物連鎖が豊かになると、その数も比例して増えていく。アマガエルが多い畑はそれだけ命が豊かな畑ということになる。アマガエルのお腹の膨らみで、その時期の畑の虫たちの総個体数を知ることができる。
 
 
 

害獣&益獣図鑑 
オリーブ畑に集まる獣たち

害獣

二ホンジカ

年々その頭数を劇的に増やし、今やオリーブアナアキゾウムシによる被害を上回る最大の困りもの。夜行性でオリーブの葉や樹皮を食べる。樹が小さいうちは葉を丸裸にされることで、成長を著しく阻害し場合によっては枯死させる。また、樹皮も食害し、樹皮が大きく剥かれた樹は、徐々に樹勢を弱めてしまう。オレウロペインという虫が嫌う 渋みも全く気にせずオリーブの葉が大好きで新芽が出た途端に食べてしまう。
 

害獣

イノシシ


イノシシは二ホンジカ以上のペースで増加しており里山の農作物を荒らしている。雑食性のイノシシではあるがオリーブの葉や根を直接食べることはない。しかし、オリーブ畑に腐葉土を入れたり、草生栽培を始めることで、土中にミミズやコガネムシの幼虫などが増えると、それらを食べるために土を掘り起こす。オリーブの根の周りに好物の虫がいることで、根も一緒に切ってしまい、その成長を阻害する事態が増えつつある。また、シカ防除用のネットなどを力づくで壊して畑に侵入するため、その後シカが入ってオリーブを食害する被害なども起きている。

害獣

モグラ


有機栽培により土中にミミズが増えてくるに従いそのミミズや虫などを食べにモグラもやってくる。オリーブの根の周りを掘ることで、根の細根が乾いて枯れてしまうことがあるが、イノシシやシカの被害に比べて軽微であるため、基本的にはそのまま放置している。
 

無害

ニホンザル


里山の畑を荒らす3大害獣の1つ。最も賢く防除方法が難しい。しかし、サルはオリーブを好まないので、畑にやってくることはあっても特に被害を受けることはない。そのまま距離を保ってそっとしておく。
 

益獣

イヌ


島には野良イヌがおり、畑を含めテリトリーにして生活しているケースがある。夏に暑さ対策のため地面を掘ってオリーブの根が傷つくことがあるが、それほど大きな被害ではないので黙認している。しかし野良イヌがテリトリーにしている畑にはシカがやってこないというメリットもある。ちなみに、イノシシはイヌより強いのかイヌがいても気にせずやってくる。
 
 

友達

ネコ


オリーブ畑に最も頻繁にやってくる動物はネコである。基本的に日当たりがよく、風な通しもよいオリーブ畑は野良ネコや飼いネコにとって快適な憩いの場所になっている。畑に現れるネコはテリトリーが決まっており、いつも同じような時間に同じネコがいる。愛想のいいネコもいて、ひとり農家の話し相手になってくれるネコもいる。
 

掃除屋

カラス


カラスは黒く熟れたオリーブの実が大好物。ただし渋みが残っている青い実を食べることはなく、ほとんどは地面に落ちた完熟した黒い実をたべるだけの掃除屋さん。コガネムシの幼虫も好物らしく、畑の土の中から掘り出して食べているのを見かけることもあるのでオリーブ農家にのってはありがたい鳥。
 
 

守り神

ヘビ


畑の食物連鎖が活発になり生物全体の個体数が増えるとそれらを食べるアマガエルが増える。そのアマガエルが更に増えると、それを食べるヘビがやってきて、石垣の間などに住みつく。つまりヘビが定住している畑は、それだけで生命が溢れている畑である。ときおり頭上のオリーブの樹にぶらさがったヘビとニアミスして驚くこともあるが、アオダイショウやシマヘビに危険はない。しかし、非常に稀ではあるがマムシが来ていることもあり、そのような場所は草丈を高くしすぎると潜まれて、うっかり踏んでしまうということも起こりうるので定期的に草刈りをしている。
 
 

 オリーブアナアキゾウムシ図鑑
オリーブ農家とオリーブアナアキゾウムシは共にオリーブを愛し、オリーブに生かされている同士であり最大のライバル。僕が出会ったゾウムシたちのあれこれ。 夜行性なので日中は枝葉の陰で休んでいる。なぜだか鼻を下向きにぶら下がる姿勢がお気に入り。 基本的には、じっとして一カ所に留まることが多い。やむえない事情があれば、とりあえず歩く。更にやむえない事情があれば夜に飛ぶこともある。 とにかく交尾大好き。オスはメスを探して交尾するために生きているくらい。メスを見つけるとすぐ交尾。数日間は乗っている。上がオス、下がメス。 オスとメスは裏返してお尻のあたりの模様で見分けることができる。畑にきているゾウムシがメスの時は卵を産んでいるので少々慌てることになる。 卵をオリーブの樹に産み付けるために口吻で少しずつ穴を穿つメス。夜に産卵する。卵を産み付ける好きな位置には偏りがある。暗い場所や暗い日は昼でも産卵するから恐ろしい。 飼育箱の中で生まれた卵。1mmくらいの白くて真ん丸の卵。1晩に1個ペースくらいで産んでいる。感覚だが1回の交尾で20~30個くらいの卵が受精しているみたい。 卵から孵化して幼虫になると樹の柔らかい外環部分を食べてオガクズ状の糞を出す。この糞を見逃さないことが僕のような有機栽培農家にとって、とても大切。 オガクズを見つけたら、ただちにドライバーなどで掻きだすこと。オガクズの出方や気象状況などから幼虫のサイズや食い進む進路などがある程度予測できるようになる。そうすると樹を傷つける量を最低限にすることができる。 成虫と同じくらいのこの終齢幼虫サイズになるとそろそろ羽化への準備開始。 透き通ってきれいな蛹で羽化する日を静かに待つ。触るとぴくぴく動くので面白い。 羽化したら、早速交尾。樹皮がはがれたような隠れ場所が大好きなので、こういうところに皆で肩寄せ合って交尾中。幼虫時代の樹の状態によって個体の大きさが違う。 ちなみにゾウムシは冬眠して冬を越す。オリーブの樹の根元にある枯れ葉は暖かいベットになる。 まれにではあるが赤いオリーブアナアキゾウムシがいる。蛹から羽化したばかりときに赤い個体のものがいるが、日にちとともに普通黒茶に変化していく。 ゾウムシは音に反応しない。音を聞き分ける耳がないみたい。 ゾウムシは時速30mで歩く。見た目のイメージよりすばしっこい。 ゾウムシは飛べますが、では泳げるでしょうか?水に入れると、水面に浮いてじっと固まるか、バタバタと足を動かすか。たぶん泳ぎは相当下手で水も嫌いみたいです。なので自分から水に入ることはありません。 ゾウムシの天敵を探し続けて、とうとう食虫植物と対決させる。何日も固まったままで消化できず。最後は食虫植物が根負けしてゾウムシがのそのそと出てきてしまう。 ゾウムシの幼虫は樹を食べるが、成虫は何を食べているでしょう?葉?実?枝?はっきりと好き嫌いがあるようです。

閑話休題
オリーブを育て始めた頃、島の農家の先輩たちからオリーブアナアキゾウムシがどれだけやっかいな虫かということを散々聞かされていました。スミチオンなしでゾウムシからオリーブを守れるはずがないと。そこでゾウムシってどんな虫ですか?飛んでくるんですか?何を食べるんですか?と質問するのですが、案外ゾウムシのことを知っている人が少なかった。飛ぶという人もいれば飛ばないという人もいるという具合。ネットの記事や書籍を探してもなかなかその生態が書かれたものもない。東京の大きな図書館まで出かけていき見つけた本は大正時代に出版されたものでした。効果的な農薬ができてから、オリーブアナアキゾウムシの研究はあまり必要でなくなったようです。だったらということで、ゾウムシを捕まえてきて飼ってみようと思い立ちます。そこから畑仕事の合間に、島のあちこちに出かけていきゾウムシを捕まえる日々が始まりました。最初のうちは、どこにいるのか分からないゾウムシを1匹も捕まえることができません。しかし子ども時代に虫捕りばかりしていたお陰かどうか、だんだんゾウムシのいるところが分かってきました。2年目の夏にはあっという間に100匹以上のオリーブアナアキゾウムシが飼育箱の中に。そのゾウムシたちが入った飼育箱を枕元に置いています。ゾウムシと一緒に暮らすことで、飛び立つゾウムシの姿をみたり、ゾウムシの本当の好物に納得したり、ゾウムシたちがざわざわと騒ぎ出す夜がいつも同じような夜だったり・・・。
 
今では、オリーブアナアキゾウムシと僕は、オリーブが大好きでオリーブがあるから生かされている同士のような存在になっています。