オリーブの実には渋みがあります。この渋は虫や鳥、動物から身を守るために木が作り出すもので、そのお陰でオリーブは比較的、害虫による被害が少ないと言われています。この渋みの成分は人間の体にとっては抗酸化作用など有用な成分ですがオリーブの実をそのまま食べることを難しくしています。
 
国内で製造されるオリーブの塩水漬けの大部分は渋抜きのために苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を使っています。苛性ソーダは、薬局でしか購入できない強アルカリの薬剤で、その取り扱いは難しく、どのご家庭でも気軽に扱えるものではありません。また苛性ソーダを使うことで体に良い成分であるポリフェノール類のほとんどが失われていると言われています。

山田オリーブ園では、このような強い薬剤を使用せず、オリーブの実に含まれる渋みを含めた本来の風味を残しつつ、食べやすいオリーブの実を求めて沢山の失敗をしてきました。
 
その中で、ほんのわずかですが比較的うまくいった方法を紹介しています。
 
ここでは紹介していませんが、乳酸菌によって渋を抜くヨーグルト漬けや納豆菌による納豆漬けなどでも渋は抜けます。また、酢、石灰、炭酸水、草木灰、水煮、冷凍、土埋めなど、渋が抜けなかったり腐ったり、とても不味かったりという沢山の失敗をこれからもどんどんしていこうと思います。
 

渋抜きをする材料・方法
重曹
パリッとサラダ感覚
塩をまぶすだけ
毎日水替え
塩水
伝統的な方法
アルコール
赤ワインやブランデーで
 
日本酒や味噌で
干す
 麻袋に入れて日陰干し
焼く
 香ばしくてワイルド
乾かす
 旨味がぎゅっと
完熟
 なぜかほんのり甘い
 

空気に触れさせずグリーンがきれいです。

重曹水で渋抜き

難易度★★★★
手間は掛かるけどフレッシュなサラダ感覚のオリーブの風味を楽しめる方法。


[準備するもの]

  1. オリーブの生の実
  2. 食用の重曹
  3. オリーブの種抜き器  
  4. ガラス瓶

 
[作り方]

  1. ガラス瓶に水を入れます。
  2. グリーンオリーブの種を抜きます。
  3. 種を抜いた実をそのままガラス瓶の水の中に落とします。(空気に触れる時間を少しでも短くするため)
  4. 3%の重曹水になるように重曹を混ぜます。
  5. 1日1回重曹水を取り替えます。(実は外に出さずホースで水を入れ真水にしてから重曹を入れます)
  6. 気温やオリーブの熟度によって前後しますが概ね10日前後で渋が抜けます。
  7. 好みの渋の濃さになったら1%の塩水に漬けます。
  8. 1日に1%ずつ濃い塩水に取り替えます。
  9. 好みの濃度の塩水になったら完成です。山田オリーブ園で販売している塩漬けは4%の塩水にしています。
  10. 塩分濃度が低いと早く痛みます。冷蔵庫に保管し2カ月以内に食べます。

 
[工夫]

  1. オリーブの実は空気に触れる時間が長いほど秒単位で緑色から茶色に変色します。緑色の塩漬けを作るためには空気に触れないように作ることがポイントです。ただし、茶色でも緑色でも風味は変わりません。
  2. 水替えのタイミングで瓶の中の実を攪拌することで渋抜けのムラを少なくできます。
  3. 種を抜かず傷をつけた実でもできます。渋が抜けるまで半月くらい掛かりますが、旨みと歯ごたえは種ナシより少し上です。傷をつけるのはセラミック製の包丁のほうが切り口が変色しにくいです。
  4. 皮の色は若干悪くなりますが、重曹水に漬ける前に、100℃の熱湯をくぐらせるブランチングをすると傷口の変色を更に防ぐことができます。
  5. オリーブの皮が気になる場合は食べる前に熱を加えると柔らかくなります。料理などで熱を通すとほとんど気になりません。



 

オリーブの風味がぎゅっと詰まったままです。

塩で渋抜き

難易度
塩をまぶして置いておくだけの最も簡単な方法。塩や実の品種の組み合わせなどにこだわると楽しい。


[準備するもの]

  1. オリーブの生の実(完熟したブラックがベスト)
  2. オリーブの種抜き器  
  3. ガラス瓶

 
[作り方]

  1. ブラックオリーブの種を抜きます。(種を抜いた方が早く渋は抜けますが抜かなくてもOK)
  2. 実の重量の1~2割程度の塩と実をガラス瓶に入れてざっと攪拌します。
  3. 暗所に保管します。
  4. 気温やオリーブの熟度によって前後しますが概ね3ヵ月前後で渋が抜けます。

 
[食べるときの工夫]

  1. 塩味が効いた食材として、そのまま料理に入れて使えます。
  2. フードプロセッサーにかけてオリーブペーストにしてから料理に使うこともできます。
  3. そのまま食べる場合は塩抜きをしてください。真水ではなく薄い塩水に漬けると塩気が抜けやすくなります。塩水に漬けて冷蔵庫に入れておくと3日~1週間程度でほどよく塩が抜けます。
  4. 岩塩や海塩など塩にもこだわる多彩な塩漬けが楽しめます。

 
 

 

イタリア伝統手法、一番難易度高いかもです。

水で渋抜き

難易度★★★★★
2カ月ほど1日~2日に1度水を替えて徐々に渋を抜く方法です。大変です。


[準備するもの]

  1. オリーブの生の実
  2. 水(水道水)
  3. オリーブの種抜き器  
  4. ガラス瓶もしくはバケツと落とし蓋

 
[作り方]

  1. 実はグリーンでもブラックでもOK。ブラックの方が早く渋は抜けます。
  2. 種を抜きます。種を抜いた方が早く渋は抜けますが抜かなくてもOK。
  3. 空気に触れないように実を水に浸します。気温にもよりますが1日~2日に1度は水替えします。
  4. 空気に触れたり、気温が高かったり、水替えを忘れるとカビます。
  5. 冬に作り、室内ではなく日が当たらない外に置いておきます。
  6. 渋が抜けるまでは最低でも1カ月ほど掛かります。渋が抜けたら塩水に入れて冷蔵庫で保管してください。

 
[食べるときの工夫]

  1. ハーブなどを入れて色々な風味をお試しください。
  2. 岩塩や海塩など塩にもこだわる多彩な塩漬けが楽しめます。

 
 

 

オリーブの品種によって全然違うみたいです。

塩水で渋抜き

難易度★★
7カ月ほど塩水に浸すだけの簡単な方法です。


[準備するもの]

  1. オリーブの生の実
  2. 塩水(塩分7~10%)
  3. オリーブの種抜き器  
  4. ガラス瓶もしくはバケツと落とし蓋

 
※シンプルな方法ですのでオリーブの品種によって風味が全く違います。
 
[作り方]

  1. 実はグリーンでもブラックでもOK。ブラックの方が早く渋は抜けます。
  2. 種を抜きます。種を抜いた方が早く渋は抜けますが抜かなくてもOK。
  3. 空気に触れないように実を7~10%程度の塩水に浸します。冷暗所に保管します。
  4. 空気に触れたり、気温が高かったりするとカビますので、たまにチェックすることをおすすめします。
  5. 渋が抜けるまでは7カ月~1年ほど掛かります。
  6. 渋が抜けたら薄めの塩水に入れて塩抜きをしたら食べれます。冷蔵庫で保管してください。

 
[食べるときの工夫]

  1. 塩味が効いた食材として、そのまま料理に入れて使えます。
  2. そのまま食べる場合は塩抜きをしてください。真水ではなく薄い塩水に漬けると塩気が抜けやすくなります。塩水に漬けて冷蔵庫に入れておくと3日~1週間程度でほどよく塩が抜けます。
  3. 岩塩や海塩など塩にもこだわる多彩な塩漬けが楽しめます。

 
 

 

アルコールで渋抜くと実がぷりぷり。

お酒で渋抜き

難易度★★
1年ほどアルコール類に漬けるだけでオリーブの香りがするお菓子になります。


[準備するもの]

  1. ブラックオリーブの生の実
  2. 赤ワインを使ったものを紹介します。
  3. オリーブの種抜き器  
  4. ガラス瓶もしくはバケツと落とし蓋

 
[作り方]

  1. 実はブラックの方がまろやかで美味しいです。
  2. 種を抜きます。
  3. 空気に触れないように実を赤ワインにに浸して冷暗所に保管します。
  4. 空気に触れた部分はカビが発生するので、実が赤ワインで全部漬かるように、うちではコーヒーフィルターの濾紙で押さえています。
  5. 渋が抜けるまでは最短でも半年~1年ほど掛かります。

 
※赤ワインの代わりに白ワイン、ホワイトリカー、ブランデー、焼酎やウオッカなども試しましたが、それぞれのお酒の風味を楽しめました。お好きなお酒でチャレンジしてみてください。
 
[食べるときの工夫]

  1. 赤ワインを捨てて代わりにメープルシロップやハチミツに漬けると美味しいです。
  2. お菓子の材料やアイスクリームやヨーグルトに乗せて食べています。

 
  

 

 この赤はオリーブの天然の色素の色です。

麹(日本酒)で渋抜き

難易度
日本酒の麹菌によって半月程で渋が抜けます。オリーブの養分が移ったポリフェノールたっぷりのオリーブ酒が半月くらいでできます。


[準備するもの]

  1. ブラックオリーブの生の実
  2. 日本酒
  3. ガラス瓶

 
[作り方]

  1. 実は赤い色素が多く出るブラックの方が綺麗です。
  2. 実のポリフェノールが移った日本酒を飲むので実の種は抜かなくてもOK。
  3. ブラックオリーブを日本酒でひたしたら満たすだけです。
  4. 1週間くらいで日本酒が鮮やかな赤色に染まり始めます。
  5. 2週間もすればお酒にオリーブの風味が移っているので、そのお酒が飲めます。

 
[食べるときの工夫]

  1. 冷でも燗でも美味しいです。
  2. 私は風邪のときに飲みます。効いている気がしますが実際は分かりません。
  3. 実は風味が抜けて、特に美味しくないです。

 
※同じ麹菌の味噌でも渋は抜けます。種を抜いた実を味噌漬けにして タッパーに入れておくと2週間ほどで渋が抜けています。奈良漬のような不思議な味と歯ごたえのジャパニーズオリーブができます。
 
 

 

  オリーブ特有の油の旨みが感じられる素朴な味。

干して渋抜き

難易度★★★
塩で水分を抜いた後、日陰干しするだけ。原始的なオリーブそのものの味を楽しめます。


[準備するもの]

  1. ブラックオリーブの生の実
  2. 麻袋
  3. ザル

 
[作り方]

  1. 皮に傷を付ける。(包丁でぐるりと一周切るかフォークなどで10箇所くらい穴を開ける)
  2. たっぷりの塩と一緒に麻袋に入れる。(麻袋の代わりに粗めの布に入れて口を紐で縛ってもいい)
  3. 雨が掛からず風通しがいい場所に吊るす。下に水が垂れるのでバケツなどを置く。
  4. 1週間~10日ほど待つ。渋が抜けていればOK。
  5. 塩をざっと軽く洗い流しザルに広げて日陰で干す。
  6. 天日干しにする場合は半日程度でOK。長く干しすぎると香ばしくなりすぎる。
  7. 好みの硬さまで干す。短ければ半生、長く干すとからから干し。
  8. 半生の場合は冷蔵庫で保管し早めに食べないとカビます。からから干しだと常温で半年くらい保ちます。

 
[食べるときの工夫]

  1. 酒の肴です。
  2. うちでは夏にビールのつまみとして食べています。

 
 

 

 オリーブ特有の渋みも楽しむ。

焼いて渋抜き

難易度
完熟したブラックオリーブを塩で炒めるだけのイタリアの田舎料理。


[準備するもの]

  1. ブラックオリーブの生の実
  2. フライパン

 
[作り方]

  1. フライパンで生の実を炒めて、ぱっと塩を振りかければ出来上がり。
  2. 基本的には熱を通しても渋みは抜けません。12月頃の完熟して渋みが減ったブラックオリーブを使うことで、ほのかな渋みとオリーブの旨味を一緒に楽しみます。
  3. 渋みは収穫する時期による熟れ具合と品種に左右されます。うちでは12月に収穫し損ねたルッカを使うか、黒くなったハーディズ・マンモスを使います。ハーディズはもともと渋みが少なく実が大きい品種なので、実を食べるのに、適しています。

 
[食べるときの工夫]

  1. 酒の肴です。
  2. 収穫の山場が終わった12月に日本酒の肴として楽しみます。

 
 

 

 オリーブの旨味を閉じ込めます。

乾燥して渋抜き

難易度★★★
乾燥機で低温乾燥させます。


[準備するもの]

  1. オリーブの生の実
  2. 種抜き器
  3. 食品用の乾燥機

 
[作り方]

  1. 種抜き器で種を抜きます。(種ありのままだと時間が掛かりすぎるでおすすめできません)
  2. 乾燥機で40度以下の低温乾燥がおすすめです。30時間くらいで、ほぼ渋が抜けます。
  3. 高温で乾燥させると時間は短縮できますが香ばしくなりすぎてオリーブの風味は飛びます。

 
 
 

 

 オリーブの仄かな甘みが感じられます。

完熟させて渋抜き

難易度
真っ黒に完熟した実をそのままにして真冬に採って食べます。


[準備するもの]

  1. オリーブの生の実(完全完熟)

 
[作り方]

  1. オリーブの実は12月には完熟しますが、それでも収穫せず年を越して1月に収穫します。
  2. 生のまま齧ると渋みはほとんどありません。仄かな甘みが感じられます。
  3. うちではルッカを食べます。
  4. 野鳥が生っている実をそのまま食べ始めたら渋みが消えたサインです。

 
※オリーブの実を収穫せずそのまま生らしていると木にとってはストレスです。できれば年越しの実は少量に止めてやってください。
 
 
 

 

閑話休題
オリーブの実は濃い緑色から黄緑色、黄、赤、紫、黒と熟れるに従って渋みが減っていきます。緑色の実は、虫や鳥たちに食べられないよう、とても渋みは強いのですが、そんな渋い実を平気で食べる虫がいます。それがハマキムシ。葉巻虫というくらいですから普段はオリーブの葉を巻いて隠れ家にしつつ、その葉を食べているのですが、実が生ると葉から降りてきて数個の実が重なったところを家にしてその家を穴だらけにしてしまいます。絵本の「はらぺこあおむし」は、かわいいですが、オリーブ農家としては収穫目前のピカピカの実をいくつも糞だらけにしながら食べ散らかすハマキムシは、あまりかわいくありません。しかし、他の虫が食べない渋いオリーブの実をハマキムシはなぜ大好きなのでしょうか。渋くないのでしょうか。不思議だったので、オリーブの実を食べて丸々に太ったハマキムシを生のまま畑で食べてみました。すると不思議、全く渋くなくてまろやかなオリーブの甘い味だけしかしません。ここからは想像なのですが、ハマキムシのお腹の中にある消化酵素がオリーブの渋みの成分を分解したようです。もしかすると生のハマキムシを沢山食べると、その酵素をお腹に取り込むことができて人間である僕もオリーブの緑色の実をむしゃむしゃ食べれるようになるかもしれませんが、今のところオリーブ以外の食べ物があるので、やめています。