有機農業とは自然環境を受け入れ、多様な生態系に支えられながら植物に健康な食べ物を与えてもらう農業だと考えています。
 
晴れたり曇ったり雨が降ったり風が吹いたり。そういう自然現象をコントロールすることはできないので、そのまま受け入れる。同じく虫や動物、菌類などの命も、まずはそのまま受け入れる。そして、その中でオリーブが育ち、実を付けるために人間ができることを毎日少しずつやっていく。
 
コントロールどころか天気も虫もオリーブも分からない。分からないから、まずは見る、その虫はそこで何をしているのか、樹の葉色や枝振り、じっと見ていることで何かが分かったり全く分からなかったり。
 
畑の生き物や土が四季を通して移り変わっていく。その畑の中に立ち喜んだり悲しんだりする農業が僕の仕事です。
 
ここに書いたことに正解はありません。これまで畑で自分の目で見たことの記録を残します。

オリーブ畑の四季

Q : 農薬を使わないでオリーブを育てられますか? 

 

  • オリーブの葉や実は虫や鳥に食べられないような渋みが強く、その渋みが樹を守っています。また、オリーブと同じモクセイ科の樹木は「キンモクセイ」「ライラック」など限られていることから、それを専門に食害する虫等も限られています。

 

  • オリーブを食害する主な害虫は「オリーブアナアキゾウムシ」「ハマキムシ」「スズメガ」「コウモリガ」「コガネムシ」「カミキリムシ」「カメムシ」「カイガラムシ」です。この中で、オリーブの樹を枯らす「オリーブアナアキゾウムシ」と、大量発生し新芽や実を食べつくす「ハマキムシ」から樹を守るために農薬を使うことが奨励されています。

 

  • 農薬を使わないでオリーブアナアキゾウムシ(以下ゾウムシ)とハマキムシから樹を守る方法のヒントは次項以下に書きました。害虫から樹を守るためには害虫が住みにくい環境を作り、害虫がいたら手で捕るというシンプルな方法を実践しています。

 

  • 方法はシンプルですが農薬を使う代わりに手間が掛かります。1本のオリーブを農薬を使わずに育てるのは、それほど難しくありません。しかし、100本、更に1000本のオリーブにやってくる害虫を毎日、見回って手で捕るのは大変です。農産物を売って生計を立てている農家にとって、その手間が収入に見合うかどうかが大切です。

 

  • 自宅の庭や家庭菜園などでオリーブを育てる場合、ある程度の手間を覚悟すれば無農薬でのオリーブ栽培は可能です。農業として無農薬でオリーブを栽培する場合は、採算及びそれぞれの価値観等などに照らし検討してみてください。

 
 
 

Q : 農薬を使わないでゾウムシからオリーブを守れますか? 

 

  • オリーブの樹を枯らすのはオリーブアナアキゾウムシという種類のゾウムシ1種類です。

 

  • このオリーブアナアキゾウムシ(以下ゾウムシ)の生態を知ることで、ある程度被害を減らすことができます。

 

  • ゾウムシの幼虫が樹の幹を食べることで、根が吸った水分や養分を枝葉に送れなくなり、ひどい場合には樹そのものが枯れてしまいます。

 

  • ゾウムシの成虫が交尾をし、メスがオリーブの主幹に卵を産み付けます。その卵から孵った幼虫が幹の柔らかい部分を食べながら成長し、羽化し、また交尾をします。このサイクルを切ることが大切だと考えています。

 

  • ゾウムシはある日突然、歩いてもしくは飛んでやってきます。これを防ぐことは難しいです。

 

  • 幼虫が樹を食べながら成長する過程で、そのオガクズ状の糞を樹の外に排出します。この糞を見つけることが大切です。

 

  • この糞をヒントにゾウムシの幼虫と更には成虫を見つけることができればゾウムシによるオリーブの被害をある程度抑えることができます。

 

  • ゾウムシの生態を知り、ゾウムシが好まない環境を作ることで、外からやってくるゾウムシの数を減らすこと。もしゾウムシがやってきて、孵化しても糞を目印にゾウムシを捕まえて増やさないことが大切です。

 
 
 

Q : 農薬を使わないでハマキムシの被害を減らす方法はありますか? 

 

  • 小豆島のうちの畑にやってくるハマキムシは3種類です。

 

  • 「マエアカスカシノメイガ」「チャハマキ」「マダラメイガ」。それぞれ性格が全く違います。問題は大量発生することがある「マエアカスカシノメイガ」です。

 

  • オリーブの葉や実を食べるのは、蛾である成虫ではなく青虫である幼虫です。

 

  • ハマキムシの成虫や幼虫が大好物という虫は沢山います。いわゆる益虫、それらの虫が畑に沢山いる環境を作るようにしています。

 

  • 春と秋にハマキムシが大量発生することがあります。益虫の数がハマキムシに追いつかないくらい大量に発生して、樹の被害が大きくなりすぎる場合は、人間が手で潰します。

 

  • ハマキムシは柔らかい新芽が好きで枝の先端当たりの葉を巻いてその中にいます。巻いている葉を目印にハマキムシを見つけることができます。

 

  • ハマキムシの幼虫を1匹ずつ潰すのと合わせて卵やお腹に卵を持っている成虫(蛾)を捕殺すると効率はいいです。

 

  • ハマキムシの成虫を叩き落とす「ハマキムシタタキ」という道具を使用することで沢山の成虫を捕殺することができています。(※ブログ参照)

 
 
 

Q : 農薬を使わないで炭そ病の被害を減らす方法はありますか? 

 

  • 炭そ病(炭疽病)は炭そ病菌によって引き起こされる病気で、オリーブの実にカビが生えて委縮したような状態になります。炭そ病の詳しいメカニズムは分かりませんが、これまでの経験を基に対策を取っています。

 

  • 炭そ病が発症した実はカビ臭くなりオリーブオイルの香りを損ねますので、収穫時及び収穫後に選果して炭そ病の実を取り除きます。また樹から収穫した実に炭そ病菌が入っている場合、急速に発症しますので一刻も早い搾油が必要です。

 

  • 炭そ病菌が枝葉で発症すると枝葉が曲がり枯れていきます。梢枯病と呼んでいます。

 

  • 炭そ病の被害を減らすために3つの方法を試しています。①炭そ病が発症しにくい環境を作ること、②発症の伝染を最小限にすること、③発症する前に実を収穫してしまうこと、です。

 
①発症しにくい環境を作ること

  • 経験上、炭そ病が多い畑と少ない畑、炭そ病になりやすい樹とそうでない樹、炭そ病が発症しやすい樹の中の部分とそうでない部分というのがあります。炭そ病になりやすい環境は、風通しが悪く湿度が高く日が当たらない環境です。畑の水はけを改善し、樹の植え方を工夫し、適度な剪定によって、風通しが良く乾燥した明るい畑を作ります。これ以外に山際の畑での発症が多くみられます。山林から適度な距離を保つことで発症を軽減します。

 
②伝染を最小限にすること

  • 炭そ病が発症した実が濡れると炭そ病菌が実の外に出てきて茶色の汁が実に溜まります。この汁が他の実に付くと、その実にも炭そ病菌が入り発症するようです。雨が降るたびに炭そ病が増えていきますので、できるだけ炭そ病の実を見つけたら地面に落としておきます。地面に落ちた実から樹になっている樹に伝染することはないようです。

 
③発症する前に収穫すること

  • うちの畑では概ね10月中旬以降から炭そ病の発症が始まります。緑色の実より黒い実に発症が多いです。また炭そ病菌が最も活性化する温度は17℃から24℃と言われています。発症が多い傾向の畑や樹、部分の実は10月初旬までに緑果で収穫してしまうのも1つの方法です。

 
 
 
 

Q :  ゾウムシの被害を減らす樹形・剪定方法はありますか?

 

  • オリーブアナアキゾウムシの被害をゼロにすることはできませんが、樹形を整えることで、ゾウムシの飛来率を軽減し、発生しても発見捕獲率を上げることはできます。

 

  • ゾウムシが産卵するのが最も多い樹の部位は株元です。株元にゾウムシが長く留まらないような樹形にします。

 

  • ゾウムシが嫌いな環境は、太陽の光と乾燥と熱です。嫌いな環境になるように樹形を整えることで飛来数を抑えます。

 

  • もし、ゾウムシがやってきても幼虫のオガクズ状のフンが発見しやすいように人間の目が届く樹形にします。発見を早めることで木のダメージを最低限に抑えます。

 
 
 
 

Q :  剪定方法で大切にしていることはありますか?

 

  • オリーブの樹形を整える目的は3つあると考えています。質の良い実を沢山収穫することが第一。第二に前述のゾウムシなどの害虫や病気の被害を軽減させること。第三に手摘みで行なう収穫を安全に効率的に行うことです。

 

  • 第一の質の良い実を沢山収穫するための理想の樹形は、国内外多くの理論があります。畑の自然環境、樹の品種、樹の樹齢や大きさ、個体差などに応じて適切な樹形は変わると考えています。質の良い実が沢山付く枝に、できるだけ多くの光を当てにはどのような樹形が良いか試行錯誤しています。

 

  • 第二のゾウムシの被害を軽減させる樹形は前述の通りです。

 

  • 第三の安全で効率的な収穫のための樹形で、まず大切にしているのは基本樹高は3m以内に抑えることです。脚立を使っての収穫はどうしても危険が伴い、効率も悪いです。低めの脚立で収穫ができる高さにします。また、樹の中心にも脚立が入る空間を作っておきます。その空間に光が入ることも質の良い実を収穫することのプラスになります。

 

  • 剪定の最適な季節は春だと考えています。小豆島は3月中旬頃から気温が上がり始め徐々に新芽が吹きだします。樹が目覚めて活性化してくると枝葉を切っても樹のダメージは最小限に抑えられます。ちなみに、常緑樹であるオリーブは冬も葉は落ちません。寒いこの時期、樹はその幹と葉に蓄えられた栄養分で静かに活動しています。その栄養分を減らす冬の剪定は基本的には控えています。更に春も深まると葉と枝の脇から芽が出てきます。これは実になるものと枝葉になるものに分かれます。どちらになるかを目で見て剪定することで、実が沢山生る枝を間違って剪定するミスを減らすことができます。初心者にはお勧めの方法です。

 

Q :  支柱の立て方を教えてください。

 

  • オリーブの小さい苗木や大きい成木を植え付けるときは支柱を立てて木を支える必要があります。

 

  • 支柱による効果は2つあります。

 

  • 1つは倒木対策です。台風などの強風によって木が倒れることを防ぐことができます。

 

  • もう1つは、細根の成長を守ります。強風でなくても断続的に地上部が揺れることで、地下茎に振動が伝わり細根が傷つくことがあります。細根が傷つくと養分や水分を吸い上げる能力が落ちるので木の成長が阻害されます。

 

  • 支柱の素材として、鉄の杭や棒・L字鋼、木の杭、竹、市販のイボ竹などが考えられます。それぞれの素材の特徴に合わせて使用します。

 

  • 当園で使用している主な素材はL字鋼、木の杭、竹の3つです。

 

  • L字鋼は硬い岩盤がある圃場でもしっかり食い込み最も強風に強く耐用年数も長いです。欠点は抜きにくいことです。

 

  • 竹は最も入手がしやすく素材です。苗木など小さいものを支える場合は竹で十分です。ただし、腐りやすく2年程度で取り替える必要があります。逆に腐りやすいので抜くもしくは折って地中に残しても問題ありません。木の杭は竹より強度があるので、更に使いやすい素材です。

 

  • 支柱の形状は3つです。1本支柱、2本鳥居支柱、3本支柱です。強度は数が多いほど上がります。木のサイズもしくは地盤の固さに合わせて選びます。

 

  • 支柱はない方が草刈りや害虫駆除、収穫作業などが効率的になります。土が肥沃の畑は木の根が旺盛に張るので数年で支柱が不要になることもあります。逆に土がやせていると、何年たっても根がしっかり張らず支柱を外すことができません。

 

  • 支柱を抜くタイミングをはかるために、支柱への固定を少し緩め、台風などの強風が吹いた後に株元が動くかどうかをチェックします。全く動いていないようなら、更にゆるめ数年後に支柱を外してしまいます。

 

  • 土が乾いているときは根が強く踏ん張るので動きにくいのですが、雨が沢山降った後は土が緩み、根が支える力が弱まります。雨と風が両方強い台風の後にチェックします。

 

  • 土づくりを重視し最低限の支柱でオリーブを栽培することを理想にしています。

 

Q :  花が咲く時期に雨が降ると受粉しませんか?

 

  • 小豆島では例年5月末頃の10日間くらいにオリーブの花が咲きます。

 

  • 梅雨入り前のこの時期は比較的晴れている日が多いので降雨により受粉しないという被害を聞くことはあまりありません。

 

  • 現在、小豆島や瀬戸内海エリア以外でのオリーブ栽培が始まっており開花期の降雨に対する関心が高まっているようです。

 

  • まず前提としてオリーブは自家受粉しにくい特性があり、品種が違う木との間で受粉が行われます。一部、虫が運ぶこともありますが基本的には風媒による受粉です。

 

  • 花が咲く日に毎日、ホースの水を花に掛け花粉を落とす実験をしました。結論は水を毎日掛けても、明確に結実量が落ちることはありませんでした。

 

  • その理由を推測するとオリーブの花はひと房に多くの花が付いていて1週間くらい掛けて順次咲いていきます。ですので1日に1回程度雨を降らせても、花粉が全部落ちてしまうことはなく、残った花粉で受粉してしまうようです。

 

  • 開花期の10日間ずっと雨が降り続く、もしくは全く風が吹かないということになれば、受粉しない可能性はありますが、そうでなければ問題ないと考えています。

 

  • 雨が多い地方での収穫量が上がらない原因として開花期の雨が指摘されることがありますが、本当の原因は開花期の雨ではなく、年間を通しての降雨量の多さが土中の水分量を慢性的に増やし、根を弱らせ木全体を弱らせている疑いがあります。

 

  • 隔離した環境で実験したところ、小豆島で栽培されている4品種のうちルッカだけは自家受粉が認められます。もし1本でも実を楽しみたいということであればルッカが良いかもしれません。

 

  • 花を多く付けるネバディロ・ブランコは畑に1本植えることで大量の花粉を他の品種の木に運ぶことができる受粉樹としての役割が適しています。しかしルッカとの相性は今一つなので、ルッカ中心の畑に受粉樹を植える場合はミッションやマンザニロがいいと思います。ミッションやマンザニロはネバディロ・ブランコとの相性はとてもいいです。

 

  • 海外から新しい品種を導入する場合は既存の品種と同じ頃に開花するかが第一のポイントです。同じ時期に花が咲かないと基本的には授粉しません。


Q :  田んぼでオリーブを栽培することはできますか?

 

  • 土壌改良や排水対策をすれば栽培することはできます。

 

  • まず前提としてオリーブの根は溜まり水を嫌います。オリーブの根が潜る深さ60cm程度までは水が滞留しない構造に改善する必要があります。

 

  • 田んぼで最も問題になるのは、水を通さない鋤床層。まずは、田んぼとして使用しているときの状態や癖を事前に聞いておきます。田んぼとして使っているときは水がどんどん漏れるので鋤床層は壊れているのではないかという話しをされることがありますが、田んぼとして水漏れしてもオリーブにとっては水はけが不十分であることが、ほとんどです。また、田んぼの上部や山際などからの水の流入などは要チェックです。

 

  • 聞き取りだけでは分からないので実際に田んぼを数カ所掘ってみます。最低でも60cmくらい。小豆島では鋤床層のことを「甲羅(こうら)」と呼びます。この層があると水が抜けないので、オリーブの根が浅くなり、ある段階で成長が止まり、梢枯病や炭そ病が多発します。小豆島の田んぼでは鋤床層は概ね表層から30センチくらいの深さにあり赤っぽい色をしているのが特徴です。掘る場所は3カ所くらいにしています。田んぼの傾斜を見て水を入口の高くなっている付近、低くなっている排水口付近、それと真ん中です。

 

  • 掘った穴を観察し柔らかくて有機物を多く含む作土層、粘土を多く含み水を通さないすき床層の厚さ、その下の土壌の色や匂い、感触を確認します。

 

  • すき床層を取り除いた穴に、水をたっぷり入れて一晩置いてみます。翌日、水が抜けていればすき床層を破壊する深さまで土を耕うんすればOK、水が残っている場合は、更に深く掘って水が抜ける深さを探すか、圃場に土を入れることや暗渠の敷設などを検討します。畑の場所によって水が残る場所、抜ける場所などが偏在することもあります

 

  • 基本的にすき床層の破壊、耕うんはユンボなどの大型機械にて行います。できれば、オリーブを植えるところだけではなく田んぼ全体の土を耕うんする方が、オリーブのその後の成長には良好な環境になるようです。

 

  • ユンボなどの大型機械を使用できる場合は、できれば田んぼ全体に更に傾斜をつけることで、より排水環境が良好になります。もともと田んぼとして使用されているときの傾斜を生かしつつ更に角度を付けることにしています。

 

  • 更に畑の上手の田んぼや山から流入してくる雨水を排水するために明渠(深めの溝)で受けて圃場の外に逃がします。井戸などに逃がし水中ポンプで汲み上げてしまう方法などもあります。

 

  • 排水環境が良好に改善された元田んぼのオリーブは成長が早く沢山の実を付けます。これは田んぼのときに有機物が大量に溶け込んだ作土が土壌構造的にも栄養的にも肥えていて作物を育てるのに適しているからだと推測しています。

 

  • コストを度外視すれば、田んぼの上に50cm程度の真砂土を盛ることも考えられます。作土層が30cmあれば真砂土と作土で80cmを確保することができます。もし、その場合でも田んぼの肥えた土を混ぜ込むなど有効に活用することで土をより豊かなものに改善することもできます。

 

  • 鋤床層を抜かず、盛り土をしたり、畝を立てたりすることで排水性を高めてオリーブを栽培することがあります。しかし十分な排水とは言えなかったり凸凹の多さで草刈りの効率が落ちたりと、なかなか鋤床層を破壊した畑と比較するとオリーブの十分な成長と質の高い実の収穫を望むのは難しいと考えています。 

 
 

Q :  害虫を食べてくれる益虫はどうやったら増やせますか?

 

  • ここで言う益虫は、オリーブを食害する害虫を食べてくれる虫のことに限定します。

 

  • まず、オリーブを食害する主な害虫は「オリーブアナアキゾウムシ」「ハマキムシ」「スズメガ」「コウモリガ」「コガネムシ」「カミキリムシ」「カメムシ」「カイガラムシ」です。

 

  • 編集中です。